舌の根も乾かぬうちに

 
My Fourth Yarn and A New Spindle
 
買つてしまつたスピンドル
BosworthのMiniを購入。PurpleheartのWhorlに軸は白樺(birch)。Purpleheartは辞書を引くと「紫材」とか出てゐることがあるけれど、なんだらうね。とりあへずさつまいもといふか紅芋といふかそんなやうな色合ひでとてもよい。やつがれは「ムラサキゴゴロ」と呼んでゐる。
 
いいのは色ばかりぢやない。使い勝手も大変よい。
最初はまつたくうまく使へなくて、「……ダメか?」と思つたが、まはしつづけていくうちに「あつ」と思ふ点があつて、実によくまはるやうになつた。メリノを紡いでみたら、なんだかほんたうにストレスなく紡げるぢやあないか。つてーかこれまでストレスを感じてゐたのか、と、そのことに気づいたことにおどろくほど。
うーん、いいスピンドルだ。
軸にまきついてゐるのは去年の東京スピニングパーティーで購入したポロワス。ここのところずつとメリノばかり紡いでゐたので最初はどうにも勝手がちがつてうまくいかなかつた。いや、今もうまくいくわけぢやないけど……どうにも撚りが強くなりすぎてしまつてな。
 
スピンドルについてまちつと。
りのさんのこれを作つてゐるのと同じ人が作つたスピンドルとのこと。元は医療機器のエンジニアだつたらしい。
さうだよな、紡ぎ機とかスピンドルとかつて物理だよな。重さと方向と速度、あと半径も必要? 時にスピンドルのまはるのを見てゐると意味もなく「コリオリの力」とか「フーコーの振り子」とか思ひ出してしまふこともしばしばである。
関係ないけど染めは化学だらうか。mol単位できいてきさうである。
 
もとい。
 
なんかかういふ「職人の作つたもの」に弱い。
萬年筆もフルハルターで注文したし、佐瀬工業所のガラスペンも買つてしまつた。
ちよつとちがふかもしれないが、芝居や文楽に通ふのも「今しか見られない」と思ふからだ。演奏会も然り。
愛用してゐるタティングシャトルGR-8 shuttle。Randy Houz氏にこちら手持ちのボビンに特にあはせて作つてもらつたものである。
 
スピンドルがこれだけよいとなると、紡ぎ機もさぞかしいいんだらうなあ。
実はこれまで紡ぎ機にはまつたく興味がなかつたのだが(でも糸車とチャルカにはちよつと惹かれてゐた)、Journey Wheel、よささうだよなあ。
 
お道具だが、使ひはじめてダメでもあきらめないのはフルハルターのご主人から伺つた話による。この時は万年筆に関する話だつたが、ひとまづ道具は三ヶ月使ひ続けてみてほしい。それでダメなら調整するから、と云はれた。
編物とか紡ぎとか、単純な道具でも同じなのだと思つてゐる。使ひはじめてすぐにダメと思つても使ひつづけていくうちに「ん?」と思ふ瞬間があつたりする。写真機などでも妙にグリップがついたものよりなにもない四角いものがよいといふ話も聞く。使ひ込んでいくうちに自分で「あたり」をつけて握るやうになつていく、それがいいのらしい。
 
そんなわけで、スピンドル、増えさうかも……。とほほ。
 
下にあるのは四番目に作つた糸もどき。黒檀のスピンドルをもらつた時に一緒にメリノの十色パックももらつた。それの暖色系を紡いだもの。約48gで双糸にした状態で約72m。単糸の状態ではものすごく強撚だつたのだが、双糸にしてかうして毛糸だまにすると、なんだかふかふかしてゐて気持ちいい。さすがメリノである。
ちなみに五番目として寒色系の糸もどきも作つたのだが、こちらは約52gでおよそ157.5m。均一に紡げてゐれば世間では中細から合細くらゐの糸なのだが、生憎と実に太さにvarietyに富んだ糸である。
 
暖色系と寒色系とあはせて編むつもりだつたんだが、かうなるとむづかしいなあ。どうしたもんだろ。
 
 

クレオパトラの夢

 
jazzが好きである。
いや、正確に云ふと「jazzの中にも好きな曲がある」とでも云ふべきか。
「Creoptra's Dream」もその中のひとつ。ピアノ曲で、とてもいい。
 
まさんishiさんが編んでらして、「うーん、いい」と思つてゐたのだつた。
 
Creopatra's Dream
 
パターンはクレオパトラの蛇
つてあの死ぬ時に自分の胸を嚼ませたとかつてえアレ? ま、いつか。
 
毛糸はくつ下用に巻いてあつたToasty Toesを使つてゐる。
なんといふか、ウミユリみたやうな模様がつながつていく感じ。
かういふあじろ編みといふか白樺編みといふかEntrelacは、編むのが速い人が余技として編むにはいいかもしれないが、やつがれのやうにとろとろとしか編めない人間にはやはりむかない。いつも編み始めて「さういへばさうだつたよ」と思ふ愚かなやつがれよ。
でもまあ編んでて楽しいから、いつか。