みんなちがつてみんないい

 
佐渡佐渡へ」は佐渡情話。砂金は取れぬが都へ行かう。
てなわけで(?)、寿々木米若の歌に乗つて佐渡ならぬ京都へ行つたのが木曜日のこと。
都にゐるのはかもめはかもめでも都鳥。すなはちゆりかもめ
いや、だから「佐渡情話」からはなれろつて。
 
Candyさんとの再会をこんなに早くはたせるとは思つてゐなかつた。今回あれこれなにもかも手配して下すつて、誠にありがたいことである。
Candyさんとは新幹線のホームで会ふことかなつた。会ふなり襟元のマフラーを見せてもらつてしまふやつがれ。寒かつたのに申し訳ない。メリノをすこし太く紡いで織つたものとのことで、ふはりとかるいのにたいへんにあたたかい。しかも手触りがまたたまらない。織はやらないだらうなあと思つてゐるが、ちよつとぐらりと来る瞬間であつた。
次に在来線との改札口でteaさんと落ち合ふ。あのすてきなフェアアイルのベレーをお召しで、しかも襟元はほのかにやはらかな色合ひのかぎ針編みレース。後にリンカーンを紡いだものと伺ふ。

まづはスピンハウスポンタへ向かふといふことで、嵯峨野線へ。ここでCandyさんteaさんお手製のすばらしい手袋・帽子・レース作品などなどを拝見することに。サンカ手袋つて編込みなのにこんなに薄いんだー、とか、スウェーデンかぎ針編みの手袋つてこんなにふかふかなんだー、とか、電車の中といふことも忘れて夢中に。
 
円町駅ではかなりの人が降りた。なるほど、学校があるらしい。
teaさんに先導してもらつて一路ポンタさん宅へ。町家だと聞き及んではゐたものの、見ると聞くとはおほちがひ。なんだか昔なつかしいきもちになる御宅である。
Candyさんが事前に連絡を入れて下すつてゐたが、あちらではCandyさんとteaさんRumikoさんが一緒に来るものとは思つてゐなかつたらしい。さもありなんさもさうず。
あがつて掘り炬燵にあたりつつコーヒーなどいただきながら、Rumikoさんを待つ間にさらにいろいろ見せていただく。うーん、みんないろいろ持ちよつてゐるぞ〜。
♯もつてきてゐないのはやつがれだけにて。とほほ。
 
Rumikoさん到着後、Rumikoさんのイカロスショールを拝見したり。Candyさんのイカロスショールは淡い色合ひがすてきなショールでRumikoさんのイカロスショールは深い色合ひがすてきなショール。同じショールでも編み手が違ひ糸が違ふとまたちがつた感じでいいんだなあ。
Rumikoさんは指編みの大判ストールもご持参で、これがまたよかつた。指編みも編み方次第ではあんなにすてきなものができるんだなあ、としみじみすることしきり。やはりセンスの問題なのだらう。
 
いよいよ二階にあがつて羊毛に囲まれることに。クロスブレッドのステイプルのうつくしさにくらつときたり、くりくりでほんたうにお人形用の髪の毛みたやうなリンカーンに誘はれたりしつつ、ぐつと我慢する。どうも荷開祭以来「くりくり」に弱い。紡いだことないけどね、まだ。
 
こちらでは二階の奥大部分を羊毛が占めてゐて、「かういふものを見たい」といふと出して下さるし、そのうち自分で入り込んであれこれ選ぶこともできた。みづからこの部分とこの部分とと取り出して袋につめて重さをはかつて清算、てなことも可能。毛は木綿の風呂敷みたやうな布につつまれてゐて、それぞれにどこの牧場のなんといふ種類の羊で生後何ヶ月で云々と詳しく説明が書いてある。teaさん・Candyさんは見乍ら「これはかうだからこれこれかういふやうな毛」とか「これは本来もつとかたい(長い)毛なんだけど、まだこどもだからやはらかい(短い)」とか「何ヶ月だからこどもだけどもう母乳の汚れはない頃合ひ」とか話してゐる。唸る。
 
ポンタさんとこのカーダーを試しにもつてみた。なんとteaさんのinstruction付きである。はじめてカーダーを使ふのを見たのは恵糸やさんにお邪魔した時のことだつた。実に軽快にカーディングをする恵糸やさんの姿を見て、「カーダーとはああして使ふもの」と思つてゐたが、その後東京スピニングパーティの出展者にカーダーを使ふ人があつて、それがどうにも「えんやととどつこいしょ」といふ感じだつたので、「やつぱりカーディングつてたいへんなんだな」と思ふやうになつた。
今回teaさんのカーダー捌きを拝見して、「やはりうまい人は軽快にカーディングするものなのだ」と思つた(カーディングだけでなく、タティングシャトル捌きも軽快そのものだつた。おかげでここのところ自分のタティングにはリズム感がまつたくなかつたことに思ひ至つた。ありがたいことである)。せつかく習つたので忘れないうちにひとつカーダーを、と思ふのだが、何分にも高価なものだし、いろいろ種類もありさうなので、できるだけ触れてそれから決めたいかな、と。
♯吝い? そのとほりである。
 
その後また炬燵にあたりながらRumikoさんお手製の和菓子をいただき、ポンタさんのところを後にする。
さうさう、ポンタさん宅には木枠のまはりに和紙を張り巡らして電灯の笠みたやうに使つてゐたところがあつた。ちよつと素敵である。
 
RumikoさんのMiniで丸太町通りまで送つていただいて、そこから御所のそばの山田松香木店へ。ここは、以前京都駅前の近鉄百貨店に支店を出してゐたらしいのだが、数年前に撤退したとのこと。それを先月近鉄百貨店の和服売り場のそばで店員さんの教へてもらつたのだつた。「たんすが総伽羅なんですよ」とか「普通の町家の造りで、そばに行くと匂ひでわかりますから」とかきいてゐたのだが、どうも匂ひの元はすぐそばにある同香房のものらしい。町家の造りも香房の方だらう。
店内に入ると押し寄せる強烈な匂ひ。しかし店内にあるお香や匂ひ袋の香りはちやんと嗅ぎ分けられるのが不思議。あ、でも伽羅の匂ひだけは感じなかつたな、さすがに。
事前に予約をすると香を聞く体験講座とか匂ひ袋作成講座を受けられるらしいので興味のある向きには是非。
 
次に地下鉄に乗つて京都駅に出て、遅い昼食をとりながらさらにお話すること一時間。
teaさんとはこちらでお別れ。
雲の多い空を心配しつつ、Candyさんと東寺に向かふもすでに閉門三十分を切つてゐて中には入れず。残念。しばし雨宿りをした後、京都駅に戻る。
新幹線の時間まで、京都タワー地下の手芸屋に寄つたり、その上で土産物を買つたり、イノダコーヒーで一服したりして、電車も途中までご一緒する。紡ぎとか編みとか、音楽の話とか、とても楽しかつた。でも自分ばかり喋り過ぎた気が……。申し訳ない。
Candyさんは演奏会が近いとのことで、チケットを下すつた。チケットのノルマについてはこちらも経験のあることなので、大変恐縮である。
 
ここであれこれ頂戴したものを。うーん、これもまた申し訳ないといふかなんといふか。
 
Souvenirs
 
上からCandyさんにいただいたコーモ。黒く見えるが焦げ茶色である。コーモの名は荷開祭の時にはじめて知つて、とても興味を惹かれてゐたので実にうれしい。
下の左がCandyさんのキウイ染め、右がRumikoさんからいただいた紫色の原毛と……あっっ、はがきが見えないっっ……絵はがきが入つてゐる。
 
Souvenirs
 
タティングレースサシェはteaさんから。これにあはせやうとその隣の匂ひ袋は山田松で買つたもの。上のお香もさう。
 
さうだよなあ。もらつてうれしいのは毛とか手作りのものとかだよなあ。
だといふのにやつがれは、自分で作つたものはほぼなにももつていかず仕舞だつた。
 
理由はないわけではない。
なんといふか、自分で作つたものをほかの人に見せるのは、はづかしい。
丁寧なわけでもないしね、これといつて独自性のやうなものがあるわけでもない。
そもそもが不器用なものだから、自分で作つたものは見せるやうなものではないと思つてゐる。
くつ下は、洗つてはゐても一度でも履いたものをもつてゆくのはちよいと気がひけるといふのもある。
さらには、どちらかといへばprocess-knitter (tatter/crocheter)のため、できあがつたものへの愛着が薄いといふのもあるかもしれない。
 
と、くどくど書くのもえうするに、「だつて不器用なんだもんよう」といふのが一番の理由といふことだらう。
 
だが。
まあここは「みんなちがつてみんないい」くらゐにかまへた方がいいのかも。
でも元々のこの詩つて、「鈴と小鳥とそれから私」には互ひに長所もあつて短所もある、みたやうな感じだつた気が。
不器用にいいことはなにひとつないけどな。