惜しいっっ

 
コニー・ウィリスの「航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)」を読んでゐる。単行本で出た時にすぐ読みたいと思つた。
コニー・ウィリスには「リメイク (ハヤカワ文庫SF)」といふ小説があつて、これがもうたまらん話なのだつた。特にやつがれのやうに「ザッツ・エンタテインメント [DVD]」を見るたびにフレッド・アステアエレノア・パウエルの「ビギン・ザ・ビギン」に目を奪はれ、なにもできなくなるほど感動してしまふやうな人間にこれ以上のお話なんて存在するだらうか(反語)つてな出来なのである。
♯もちろん「踊るニューヨーク [DVD]」は手元にある。
♯「ビギン・ザ・ビギン」が白眉なのは当然として、ピアノを弾き乍ら踊るアステアがまたいい。
 
「航路」をすぐ手にしなかつたのには理由がある。
単行本で、かさばるし、値も張るからだ。
ただ当時はソニーマガジンズ社が文庫を出してゐるかどうか心もとなくて「どうしやう、買つてしまはうか」とずいぶん葛藤した。
 
時は流れ、文庫版が出版された。
文庫にしてはチト高価だが、なにしろコニー・ウィリスである。しかも翻訳は大森望
 
近頃のハヤカワ文庫特にミステリの翻訳つてほんたうにひどくて、もう目を覆ふやうなものばかり……といつて悪ければ、日本語にもなつてゐないやうなものがごろころしてゐる。しかもシリーズものだつたりするとまつたく目も当てられない状態である。こちらは巻が進めば少しは文章もましになるだらうと思つて読むのだが、そんな親心(?)を汲んでくれる子鳥はゐないのである。「道明寺」とちがつて「子鳥がなけば親鳥も」とはならない。「親鳥なけども子鳥歌はず」つてなわけだ。
 
そんなわけで、「航路」、大変おもしろい。まだ途中までしか読んでないけど。
 
だが。
見つけてしまつた。これはおそらくあり得ない。
 
物語の中で、面接中に編み物をしてもいいかと尋ねる人物がゐる。かまはないといはれると、「半分編みかけのオレンジと黄色と緑のアフガン編みをとりだ」すのである。
 
アフガン編み?
あり得ん。
 
原文にあたつてゐないので推測でしかないが、ここで登場人物がとりだしたのは多分 afghan である。すなはちソファやなんかにかけてあるアレだ。ひよつとすると赤ちやん用のおくるみみたやうなものかもしれない。
 
…………単行本から文庫になるまで指摘した人物はゐなかたつのだらうか。
ゐなかつたんだらうな。
 
といふわけで、現在狂ほしく原文にあたりたい気持ちである。