森茉莉的編物

 
新聞の書評欄に森茉莉に関する記事が掲載されてゐた。
森茉莉といふと、かつては「恋人たちの森」だとか「枯葉の寝床」だとかさういふのが好きな人が多かつた。やつがれはどうもさうした作品にのれず、森茉莉とはそれきりになつてゐたのだが、後に「贅沢貧乏」や「ドッキリチャンネル」を読むに至つて、「森茉莉、最高ぢやん」と思ふやうになつた。それから「甘い蜜の部屋」を読んで、これは気に入つた。
現在では「贅沢貧乏」や「ドッキリチャンネル」といつた作品の方が人気があるかもしれない。
 
さて、森茉莉といふとただの茶色を「仏蘭西色」と呼んで愛ほしみ、色によつてタオルの並べ方をかへ、なにからなにまで好みの色・使ひ心地でないとダメとか、そのくせ家の中は壮絶な状態だつた、とか、そんな話が有名である。
 
かういふ編み物の仕方、いいんぢやないかな。
 
もうとにかく気に入つた毛糸しか使はない。道具などについても同様。
他人が見たらただのつまらない色でも「雅やかな色」として愛で、ひたすらなめらかな編み地の手触りに酔ひ痴れる…………
 
いいんぢやない?
 
問題は、使つたことのない毛糸・道具を使ひたがるこの根性だな。