思ひ込み

 
編み込み模様は編めない。
長いことずつとさう思つてゐた。
 
思はず過去形で書いてしまつたが、実は今でもできないと思つてゐる。
なにができないつて裏に渡した糸のテンションをそろへることができないのである。時にきつすぎ時にゆるすぎる。そんな風になつてしまう。
ゆるすぎる場合は表からはさほど問題にならなかつたりはする。よほどゆるすぎない限りは、といふ前提はあるが。ゆるいのが問題になるのは、実際に身につけるときだ。手袋なら手の指や爪が、くつ下なら足の指や爪が、ひつかかつて煩はしいことになることは必至だ。
きつすぎる場合はもう手に負へない。見た目にも目がつまつてうつくしくないし、元々伸縮性に乏しい編み込み模様がますます伸縮しなくなる。といふよりは、伸びなくなる。
 
それでも過去に二つほど編み込み模様のものを完成させてはゐる。
ひとつはフェアアイル模様の帽子で、もうひとつは_Knitting on the Road (asin:1883010918)_の一足め、Canadaだ。
フェアアイル模様の帽子は物好きな人がいまでもかぶつてゐるが、くつ下の方はたんすの奥底にしまひ込まれたままだ。
 
その後も「立派なミトン」や_Selbuvotter (asin:0979312604)_のミトンを編まうとしては挫折してきた。
 
そんな中、Sock Knitters Pentathlonの課題は編み込み模様のくつ下なのだといふ。
さうか。たうたうきたか。
 
そんな心持ちで編むべきくつ下の公表を待ち、それがZiggyであると判明した9/1深夜といふか9/2未明、どうしたものかつくづく考へた。
 
編まない、といふ選択もある。
 
ここまでなんとか三足編んできた。
それで自分の限界は見えた。見きつたといつてもいいかもしれない。
今後、改善される可能性もないとはいへないが、Sock Knitters Pentathlon開催中にどうかうするのはまづムリだらう。それに、年齢から考へても、改善されるのではなくて、その逆に向かふ可能性の方がはるかに高い。
 
だが、編み込み模様に関しては初心者同然なのだし、だつたら挑戦してみる価値もある。
そんな気もした。
 
そして例によつて「うなるほど」ある毛糸の前に座して、「編まないと減らないんだよね」といふ極々あたりまへの事実に気づいて、結局編むことにした。
 
さうしてできたのがこれである。
この写真はSock Knitters Pentathlonに公開する写真として撮つたもので、編みあがつた直後に撮つてゐる。丁度「七人の侍」を見てゐて、千秋実が死んだあたりだつたと記憶する。
 
#4 Socks for SKP2008
 
これまでは、この後昼間にはてなダイアリ等に公開する用にあらためて写真を撮るのだが、おそらくこのくつ下の写真は撮るまい。
これは、挑戦用。
いや、練習用、だらうか。
多分、履くとは思ふけど、それもかなり寒くなつてからだらうな。
 
野呂のくつ下毛糸を使ふのはこれがはじめて。
単糸で、太さはかなりまちまちで、これなら手紡ぎした糸で編んでもいいかなと思つたが、テキにはナイロンが入つてゐるからな。
編んでゐて細かい毛が散るのも困つたもの。
ただ、噂にきく「結び目」はまつたくなかつた。幸運だつたのかもしれない。
一つの毛糸だまを二つにわけて、ちがふ色のところから編み始めたのだが、すぐに色が似て来てしまつてほどかうかどうしやうかさんざん迷つた。
結局、微妙な色のちがひがおもしろいぢやん、といふわけで、そのままにしてしまつた。ほら、ボーヒューズとかつて案外近い色同士を隣同士や上下につかつたりするではないか。ああいふ感じがいいんだよなあ。くつきりぱつきり色が別れてゐるより、もやもやとした「印象派」な感じが好き、ともいへる。
 
といふのはすべて云ひわけ。
 
まあでも、やはり編み込み模様は編んでみたい。
そんな気のする秋のゆふぐれ。