ニットフェスティバル2005

 
といふわけで。
初日の9/30に東京都立産業貿易センターへ行つてきた。
三階と四階を使用してゐて、三階は各社ブース、四階は「モードとしての編み物展」の展示が主な催し物であつた。
 
まづは三階。入り口のすぐ右横に各種体験コーナーがあり、ストレッチ編みを体験したことは上記の通りである。
ほかに求心編み・ヂャンティ織り・シェットランドレースの体験コーナーがあつた。
思ふに、ストレッチ編みとヂャンティ織りは用具が手に入りにくいこともあり、体験できた人は大変幸運だつたのではないかと思ふ。
個人的には求心編みにもシェットランドレースにも興味はあつたのだが、時間がなくて断念。
またこの体験コーナーではデュレデュのキットも販売されてゐた。
 
各社ブースは主要な毛糸メーカはもちろん、輸入糸業者、毛糸販売店など実に多彩な顔ぶれで、見て回るだけで幸せな気分に。クロバーでは花あみルームとアップリケパンチャー、それと咲き織りの実演をしてゐた。咲き織りでは相談も受けつけてゐた。
 
ニットカフェは利用者もあつたものの、編んでる人はみかけなかつたし、見知らぬ同士あみもの談義に花を咲かせてゐるといつたやうすは見受けられなかつた。チト残念。
 
ちなみにやつがれは Woolies で糸を買つてしまつた。どうすんだよ、いつたい。
 
四階の展示はとにかく圧巻のひとこと。
1940年代から1970年代までに出版されたあみもの書籍の中から百点を選んで新たに編んだものを時の流れに沿つて並べてゐるのであるが、「うーん、これ、どこかで常設展示してくれないか知らん」といつたところ。
すべて今回の展示のために編んだものなので、糸は今ある糸を使つてゐるとのことだが、「あみもの博物館」でもあれば絶対展示してもらひたいやうなものばかりだ。
 
50年代のあひだは機械編みが多い。水着や着物まである。だんだん手編みものが増えてくる。60年代も終はりにさしかかると「ジャンボ編み」などと称して超絶太い糸を超絶太い針で編んだものなども出てくる。また、このころまではアフガン編みの作品もあつて、大変興味深く拝見した。
 
水着といへば、かぎ針レース編みの水着があつて、思はず立ち止まつてしまつた。ほかの水着の上に重ねて着るのだらうが、ほんたうにこんなの着たのか知らん。もつたいなくて着られないかも。かぎ針レース編みといへば、ウェディングドレスの数々にも目を奪はれた。
 
またモチーフつなぎのコーナーに波を重ねたやうな趣のかぎ針編みのツーピースがあつて、どうやつて編んだのだらうかとしげしげ見つめてゐたら、そのツーピースとまつたく同じ物を着た老婦人がゐるではないか。
なんでもこの服をデザインしたご本人とのこと。
かなりのお年とお見受けしたが、お話になる時のお聲の若々しいこと、またいろいろな質問に答へることばの的確なこと、「現役なんだ……」と、あらためて尊敬のまなざしを向けてしまつた。
 
その他にも説明してくれる方がいらして、おそらく日本編物文化協会の会員の方なのだと思ふ。
70年代のかぎ針編みが気に入つて何度もうろうろしてゐたら、「そろそろ広瀬先生と嶋田先生の対談がはじまるわよ。聞き逃したら損よ」と教へてくれたのも、さうした会員の方だつたと思ふ。教へてもらはなかつたら聞かなかったかも。ありがたい話である。
 
広瀬光治嶋田俊之の対談も四階で行はれてゐた。四階中央に左記の二氏と下田直子・志田ひとみ・服田洋子・鈴木美保子・住田啓子・殿内みつ子の作品が展示されてをり、そこで対談もあつたのだつた。
 
まあさういふわけで、最初はあまり聞く気のなかつた「何様」なやつがれは、押し寄せた聴衆の方々がお召しになつてゐる手編みとおぼしきお召し物をしげしげと眺めてまはつてゐた。いや、だつて、手編みの服なんてさうさうじつくり眺める機会はさうさうないと思はないか?
みんながお二方に注目してゐるあひだ、やつがれはあちこちみまはして、「うわー、このヴェスト、素敵」とか「この鞄、どうやつて編んだのか知らん」と堪能してまはつてゐたのであつた。たはは。
 
とはいへ、お話はそれなりに興味深く、嶋田俊之の本とそれに使ふ毛糸の話なんぞを拝聴してゐて、「正直な人だなあ」としみじみしてしまつた。
 
出口近くには一般から募つた作品を並べて「コンテスト」をやつてゐた。
残念ながら、かういふコンテストには実はあまり興味はない。
かういふコンテストで選ばれるのは、「奇抜なもの」が多いからである。
独創性といふことで選ぶとさうなるのかもしれないが、でもさういふのつてあんまし実用的ぢやないんだよね。パリコレなんぞを見てゐればわかるとほりである。あれつて、ファッションの世界の人にはたまらないのかもしれないけど、「でもどこに着てけつてーの」とか思つてしまふやつがれみたやうな朴念仁にはあまり意味がないやうな気がする。
とか云ひながらあみものをするものとして一応おつかけてはゐるけどさ。
 
総括として、やつぱりかういふイヴェントはありがたい。開催されればなにを置いても駆けつけたい(まあ無理なことも往々にしてあるけれども)気にさせられる。
 
ただ気になるのはお年を召した方が多いといふこと。
平日だからかな、とも思つたが、でもあんまし若い人が編んでるとこ見かけないしなあ。
 
個人的に未来を気にしてゐるものがいくつかあつて。
たとえば演歌、あるいは新派、そして伝統芸能にあみものなどがそれである。
若い人が好んでゐるやうに見受けられないものどもである。
特に新派。どうすんだらう。菅原謙次亡き後、これといつた俳優がゐないし。水谷良恵(ヲレにとつて八重子はたつた一人なので)・波野久里子の後につづく女優がゐるやうにも見えないし。
ま、新派はこの際どうでもいいか。
 
あみもの。
その行く末や如何に。