Free At Last! Free At Last!

 
とか云つたらマルティン・ルター・ケーニヒに怒られてしまふだらうか。
 
だがしかし、この感覚は「ああ、やつと……」としか云ひやうがない。
 
さう、addi Turbo 0号80cmを手にして、やつがれはやつと外でもくつ下を編めるやうになつた。
 
もちろん、これまでも外出時に編みかけのくつ下を持ち歩き、機会ある毎に編んでゐたこともある。
だが、普段の外出、すなはち通勤のあひだはくつ下を編むことはまづない。通勤時間のほとんどは公共交通機関の乗り物の中で過すからである。
四本針や五本針のとがつた先がとても気になるのだつた。
 
やつがれ自身はそんなことはないと思ふのだが、世の中には先端恐怖症の人が少なからずゐる。
また電車やバスはいつ急停車するとも知れず、また、乗客の中には予測のつかぬ動きをする人もある。
とがつたものを手にしてゐたら絶対危険だ。
 
だがそれも輪針ならばあるていどは許されるのぢやないか。
 
そんなわけで今日は編みかけのくつ下のぶらさがつた輪針を手にバスや電車の中ですきを見ては編んでみた。
いい。
絶対いい。
俗に云ふ「Home Position」に針を移動させる時に若干制御を失ふ場合があるが、それ以外の場合はほとんど問題ない。
 
ああ、やつとやつがれは行き帰りのバスの中でくつ下を編む自由を手に入れたのだっっ。
 
いや、まあ混雑してきたらやめるやうにはしてゐるけれどもね。これは普段ほかのものを編む場合もさう。
 
ところでaddi Turbo、実によい輪針である。
とにかく樹脂のコードの部分から針へ編み目を移動させる時にひつかかるといふことがない。
これまでクロバーの「匠」はこの編み目の移動がスムースでいいなあと思つてゐたのだが、まつたくaddi Turbo の比ではない。
だからといつて端の目がゆるんでゐるかといふとそんなことはない。
うーん、すばらしい……。なるほど、みんなこの針を使つて Magic Loop を楽しんでゐるわけもわからうといふものだ。
 
ただひとつ問題があるとすれば、それはやはり針が金属でできてゐる、といふことだらうか。
編み心地自体はアルミよりはだいぶましな気がする。編み目がすべりにくくなつてゐて、なのに編みづらいといふことがない。ただ、少し手に力が入る時など針の抵抗を感じるのだつた。
これが竹の針なら撓むところである。実際今Opal Tigerは0号の竹の針で編んでゐるが、ときどきかなり撓むことがある。この撓みが手への負担を軽減してくれてゐるやうな気がする。
 
しかし、いづれにしてもこの自由はありがたい。