名作劇場考

 
いや、そんなに大したものぢやないけれど。
 
かつて日曜日の夜に「名作劇場」と銘打つたアニメーション番組が放送されてゐた。
♯これを「番組が放送してゐた」と書くのが當世流らしい。
 
最初は「カルピス名作劇場」で後に「ハウス名作劇場」になつたと思ふ。
それはさておき。
わりと最近「フランダースの犬」と「赤毛のアン」の再放送といふかダイジェスト版みたやうなのを見る機会があつた。
 
フランダースの犬」には主人公ネロのご近所のおばさんが手芸にいそしんでゐる場面が出てくる。ほんのちらりとではあるけれども、作業板(「クッサン」と書かないわけは後でわかる)を前にあきらかにボビンレースとわかる手つきと道具でおばさんはなにやら作つてゐる。
だが、その作業板の上に描かれてゐるのは、どこからどうみても刺繍の図案、それもかなり素朴なクロスステッチ用の図案なのだつた。そもそも色が赤とか緑だしね。
 
アニメのスタッフはなにを考へてゐたのだらう。
ベルギーだもの、ここはやはりレース作りで、と思つたのだらうか。
でもなあ、こどもにボビンレースはわかるまい。似たやうな手芸でわかりやすいもの……刺繍か?
そんな風に考へたのだらうか。
いづれにしてもたいへん中途半端だし、刺繍なら刺繍、レースならレースにしてしまつた方がよかつたのではないかといふのは、単に手芸好きの目から見るとさううつるといふだけかな。
 
おそらく、おさない頃に見てゐたら見過ごしてゐただらうし、記憶にも残らない場面だらう。
今だからどうしても忘れられない場面になつてしまつたといふわけ。
 
一方の「赤毛のアン」。
こちらは「フランダースの犬」よりかなり後に放映されたからだらうか、手芸に関する話題については上記ボビンレースみたやうななにがなんだかわからないといふことはない。といふか少ない。ちやんと「パッチワーク」も出てくるしね。
 
これはただ単に時間の流れだけの差なのだらうか。
それとも「ボビンレース」と「パッチワーク」のpopularityの差?
あるいは「フランダースの犬」より「赤毛のアン」の方が「手芸好き」が見てゐる割合が高いから?
または作り手のこだはりか。
 
まあいろいろ考へられるけれども、おかげで名作劇場系の番組を別な角度から見られるやうになつた。
 
たとへば、ハイジは長じて後ゆきちやんの毛を紡いだりしたのだらうか、とか。
♯……紡がないか。たはは(^_^;)。
ベッキーもどこかで編んだり縫つたりしてるんだらうなあ、とか。
マルコのお母さんはマルコやそのお兄さんになにか作つてあげたりしたのだらうか。新天地ではそんな暇もなかつたらうか、とか。
 
さういへばペリーヌはDo It Yourselfな子でしたね。