「らしくない」色合ひで

 
ときどき狂ほしくドミノ編みをしたくなることがある。
 
ご他聞に漏れずはじめてドミノ編みを知ったのは「ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み(ISBN:4579108876)」である。表紙のかばんに惹かれて購入した。色合ひが好きでな。
だが、当初この本から選んだ作品を仕上げることはできなかつた。
糸端の処理が多過ぎたからである。
縫ひ針の苦手なやつがれである。糸端の処理が得意なわけがない。とじはぎだつて可能な限り避けるほどである。ちいさな四角をひとつ編むたびに糸端の処理が発生するドミノ編みは到底やつがれ向きの編み方とは思へなかつた。
 
また、この本には足りないものがあるやうに思はれた。
この本に出てくる作品は比較的たくさん四角を編む必要のあるものが多い。一番最初に出てくるのがマフラーとかばんで、このマフラーを作るにはかなりの数の四角を編む必要がある。それも中細ていどの毛糸で、しかも四角形のひとつひとつを編むたびに糸端の処理が発生する。
気が遠くなつてしまふ。
ペンケースや眼鏡ケースなど四角形の数が少なくてもすむものもあるが……だが依然として糸端の処理は残る。
 
そんな時、_Domino Knitting (ISBN:193149911X)_の存在を知つた。中身はわからなかつた。おそらく「ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み」とさうかはらないだらうと思つた。
だが結局購入した。
そして、「ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み」に足りなかつた部分が補完されてゐることで、たいへん満足したのだつた。
 
_Domino Knitting_ では最初に8つの鍋つかみ(あるいはpotholder)とヘッドバンドの編み方が出てくる。8種類の鍋つかみでドミノ編みの技術を網羅してゐるといつたところだ。いづれも四角形の数はさほど多くない。一番多いもので16個か。
確かに、本邦では鍋つかみはあまり編むものではないかもしれない。「モチーフがいっぱい(ISBN:4579108957)」や「アンティーク風ポットホルダーを編もう!(ISBN:452904100X)」のやうな本も出版されてゐて、かぎ針編みの世界ではそれなりにその存在が認められてはゐると思ふけど、でも棒針編みで鍋つかみつてどうよ、といつた感じはする。
 
だが、ドミノ編みの導入部として、鍋つかみは大変優れた作品だと思ふ。
 
そんなわけで、こんなものを編んでたりして。
 
Potholder with Domino Knitting
 
これは二番目に掲載されてゐる鍋つかみを手持ちの毛糸(綿と化繊の混紡だけど)で編んだもの。
普段の自分なら絶対使はない色と絶対使はない組み合はせで編んでみた。向かつて左側から縦に下から編むのだが、二番目に使ふ色を列ごとにそろへてこの糸は切らずに三つ編めるやう工夫した。また、周囲の色は最後の四角形で使つた色を選ぶことで(どちらかといふと、周囲の色を最後の四角形に用ゐたといふべきかもしれないが)これまた糸を切らずに編みつづけるやうにしてゐる。
 
さらに、糸端もほとんどは編んでゐる途中で処理してゐるので、苦手な糸端の処理は最小限ですむ。この編み乍ら糸端の処理をする方法も_Domino Knitting_に出てゐる。いはゆる「編みくるみながら編み進む」方法だ。
 
糸を切らずにすませる方法も編み乍ら糸端を処理する方法も、自分で考へつけよ、といふ気がする。これもまた確かだ。
でも、やつぱりこの本は買つてよかつた。なんといつても編み物の本としては破格のちいささだからである。持ち歩くのが楽。しかも見てゐるといろいろ考へることができるし。
また、この本には「ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み」には出てこない情報がもうひとつある。それは「ドミノ編みはほかの編み方より時間がかかる」といふこと。
まあ編んでみれば如実にわかるわけだが、しかし最初にことはつてあるのとことはつてないのでは大きな違ひがあると思ふ。
ヴィヴィアン・ホクスブロはいふ。「確かにドミノ編みはほかの編み方に比べて時間がかかるといふ事実は認めないわけにはいきません。けれども、楽しいことは速く終はつてほしいと願ふ人間がゐるでせうか。すくなくともわたしはさうは思ひません」と。
そのとほりだよ。
 
Potholder with Domino Knitting
 
それにしても、これ、どこかで見たやうな色合ひだよなあ。
と、考へてゐるうちに思ひ出した。
恵比寿のローワン&イエガー(ただし三越にあつたころ。まだ新店舗には行つたことがない。行きたい)だ。
ここにドミノ編みのポットホルダーやクッションカバが置かれてゐて、中にこんなやうな色合ひのものがあつたのだ。
ふ、やはりやつがれにはoriginalityなんてないのだよ。
使つた糸もオールシーズンズコットンだしな。
 
ドミノ編みについてはまだ書きたいことがあるのでそのうち書くかも。