まあ編んではゐるわけだ

 
今の状態をなんと云へばいいのかよくわからならいが。
とにかく「疲れてゐる」といふのが一番しつくりくるだらうか。
なにもする気にならない。
なにもする気にはならないが、編んだり紡いだりはしてゐる。
そんな感じかな。
 
まあでも仕上げてゐるものもないわけではなくて。
Falling Leaves Socksも完成させて京都に持つて行つたしな。宿で寒かつたら履かうと思つてゐたが、履く機会はなかつた。
 
そんな中で、あまつた毛糸でこんなものを編んでゐた。
 
Casket
 
手あみ靴下コンテスト用にexperimentを編んであまつた毛糸で作つたキャスケット。日本ヴォーグから出版されてゐるおリカ用手芸の本の最新号に出てゐるものをちよつと変へて編んだ。本では最後リリアン用の糸と細い針でまとめるのだが、全部同じ毛糸(Jaeger Matchmaker DK)と同じ針(5/0)で編んだ。
まあモデルがよいのでね、なんとか見られるわけで、実際はただの帽子である。
 
そして、京みやげも仕上げた。
 
Crochet Scarf
 
京都高島屋ホビーラホビーレ限定キットはウールキュートのマフラーである。二本取りで6/0号で編む。
ばかでせう。ばかだよねえ。京都くんだりまで行つてなぜホビーラホビーレ。しかもなぜ買つてくる。さらに帰宅して翌日に仕上げるかねえ。
ばかだねえ……。
 
フリンジは好きではないのだが、このマフラは横に長く長く編んでいくので、編みはじめの糸始末をしなくていいやうにフリンジをつけてみた。糸始末をした方が楽だつたかも。横に長く編むタイプのマフラははじめてで、案外はやく編み終へることができた。実は長くて途中であきるんではないかとちよつと危惧してゐた。
 
もう十二月も半ばだといふのに、電車の窓から眺める景色はほとんど秋だつた。京都でも、東寺さんに行つたらまだ紅葉が残つてゐて、「これは街中ならまだ間に合ふかも」と、永観堂へ行くつもりが気がついたら慈照寺に。うつくしい紅葉とはとても云ひ難かつたが、それでも秋色に染まつた木々があつた。
 
車窓から見た景色は、茶色だつたり薄茶だつたり橙色だつたり黄色だつたり、また緑色の部分が残つてゐたりでもその緑色もどこか秋めいた色だつたり、そして空の青も雲の白もどこか秋らしく、その全部がなんとも「秋色」で、時にくつ下を編む手をとめて魅入ることもあつた。
「秋色」といふのは一色ではない。いろんな色が点々とあり、またまざりあつてあり、そんなわかちがたい状態が「秋色」なのだと思ふ。「ああ、「秋色」だなあ」と思ふ色の中から一色だけとりだして、それだけを見てもおそらく「秋色」とは感じないだらう。
 
段染め糸とか多色の糸が好きなのはかういふわけなのかもしれない。