雨後の筍

 
あるいは茸か。
 
My Bossies
 
といふわけで、左が新入りのスピンドル
Bosworth Midi である。駒の部分がQuilted Maple、軸の部分はMoradoで、27g。
右側は「ムラサキゴコロ」。Bosworth Miniの駒の部分がPurpleheartで軸の部分はBirch。23g。
♯どちらの重さも自分ではかつたわけではない。札に書いてあつたもの。
 
とにかく「ムラサキゴコロ」にまゐつてゐて、「まちつと大きいのがほしいな」と思つたのがはじまりだつた。
あまりにも「ムラサキゴコロ」が気に入つたので、結局作つてゐる人に直接「これがほしい」と注文してみた。
 
先ほど「昨日届いたよ。ありがたう。とつてもよくまはつてうれしい」みたやうなメイルを書いたら、一時間としないうちに返事が来た。どうやら筆まめな方らしい。注文してから出荷まで三通も進捗メイルをくだすつたし。そのたびに何か書いて送らなきやと辞書と首つ引きだつたやつがれは、物が届いてやつと返事を出すことができたといふ体たらくである。とほほ。
 
ところで届きたてのスピンドルにはちよこつと原毛がついてゐて、わづかに紡いだ糸が軸に巻き付けられてゐた。この糸がまたすばらしくてね。「スピンドルでもこんな糸が紡げるんだ」と、身の引き締まる思ひがした。
さういへば、先日Candyさんに誘はれて吉祥寺に行つた折、ご同行のbaruさんに紡ぎ方を教はる光栄に浴したのだが、このときbaruさんが、つづいてCandyさんが紡いだ糸はやつぱりすばらしかつたなあ……。実は今手元にある。大事にしまひこんでゐたが、やはりすぐ見えるところにおいておくことにしやう。
 
んで、めづらしくhumbleな気持ちになつて紡ぐと……やはり細くなりすぎてしまふのだつた。むう。
 
「ムラサキゴコロ」もさうだが、今度やつてきたスピンドルも実によくまはる。この場合の「よく」は「長く」かな。毛を引き出す時にスピンドルの回転に影響を与へないやうな紡ぎ方をしたら永遠にまはりつづけるんぢやないかといふくらゐよくまはる。「ああ、腕がもつと長かつたらまだまだ毛を引き出せるのにっっ」と時に悔しくなるほどよくまはる。
 
楽器はその形自体がうつくしい。たとへばヴァイオリンとかヴィオラとかチェロとかコントラバスとか、あのフォルムに惹かれないか。大きくくびれた胴体と長い柄とのバランスも絶妙ではないか。あるいはフルートやクラリネットオーボエファゴットといつた木管楽器。木の感触と金属色のコントラストがすばらしい(まあフルートは基本的に銀色とかだつたりするけれども)。リード楽器はリードの形さへうつくしい。クラリネットの指の先みたやうな形をしたリードもいいし、オーボエの細いリード、ファゴットの三味線の撥みたやうな形のリードもいい。ホルンのくねくねした形もいいし、トランペット、トロンボーンの長い胴体もたまらない。チューバのベルに頭を突つ込みたい衝動に駆られたことはないだらうか。ティンパニや大太鼓・小太鼓、トライアングルその他の簡にして十分な形もいい。
Bosworthのスピンドルも、それ自体が実にうつくしい。紡がずに、ただ手に取つて眺めてゐるだけで幸せ。
そして、紡げばさらに幸せな気分になる。
愛い奴である。