ほんたうはこんなことやつてちやいけない

 
この週末、なんだか不調のまま過してしまつた。
こんな時、なんにもする気にならない。
「なんにもする気にならない」といふのは文字通りの意味で、横になればそのままぼー、起き上がつても椅子に腰掛けたままぼーつとしてゐる。
でもそのままだととても居心地が悪いので、つい、編物とかタティングとかに手がのびてしまふ。
編んでゐれば、結んでゐれば、なにがしか意味のあることをしてゐるやうな気分になれるからだ。
♯実際はなんの意味もないことをしてゐる場合が多いにも関はらず。
 
だからほんたうは、やつがれは編んではならない。結んではならない。紡いではならないのである。
さういふことをしてゐると、なんだかそれなりに達成感がある。実際はなにも意味のあることをしてゐないのに、だ。
いかん。そんなことではいかんのである。
 
わかつちやゐるけどやめられない、と、青島幸男は書いた。
あのころの青島幸男はほんたうに天才だつた。
 
そんなわけで、こんなものを作つてひとり悦に入つてゐる。バカ。
 
Tatting on Plastic Ring
 
これはプラスチックリングにタティングしたもの。海外の方のweblogで拝見して即気に入り、試してみた。
……と書くと、まるで手元にプラスチックリングがあつたかのやうだが、実際はちがふ。
我が家にあるプラスチックリングは1.0cmと0.8cm。いづれかぎ針編みに使ふので購入した。
件の海外の方はシャトルを使つたといふ。ニードル・タティングなら1.0cmだらうが0.8cmだらうがなんとかなるのだらうが、シャトルだとさうはいかない。
オリジナルは2.0cmとあつた。それに20番のレース糸でタティングしたといふ。
仕事帰りに昔なつかし職場のあつた駅に降り立つた。ここにはかつて三軒の手芸店があつた。先日新しくできた二軒がなくなつてゐることを知つた。今回古くからある一軒に行つてみたらこはいかに。売り場面積が縮小されてゐるではないかっっ(/_;)。
そして、求めるものはなかつた。
なかつたが、代替物を見つけた。
ジャンボ針用の目数リングである。
12-15mm針用の目数リングは丁度直径が2cmほどである。
そんなわけで、これは目数リングの上にタティングしたもの。糸はオリムパスの40番。色番は……わからん。
シャトルは細長くて平べつたいものを使用した。クロバーのシャトルでは輪の中に入らないと思ふ。かといつてあまり大きなリングを使ふと一周するのもたいへんだ。
よくよく見ると下のリングの色が透けてみえる。やはり透明のリングが必要なやうだ。
とても楽しいので、さらにリングを買ふことにしやう。たくさんつなげるのも絶対いいと思ふ。
ちなみにシャトルはひとつだけで済むのがまたいい。
 
Tatted Motifs
 
こちらは新たな技を習得しやうとはじめたもの。
左側は藤戸禎子先生の本に載つてゐたもの。だけど、本では外のリングのピコは4つとある。この写真のモチーフでピコが4つのリングは一つしかない。あとは全部5つ。どこかで数へ間違ひをしたらしい。
右側は……うーん、絶対どこかで見たはずなんだけど、思ひ出せない。どこかにこんなモチーフがあつたなあといふ記憶だけはある。
 
これのどこが「新たな技」なのかといふと、二段を一度に結んでゐることである。すなはち、モックピコとスプリットリングで次の段にうつるやうにしてゐるのだ。
そんなの、たいして新しい技ぢやないぢや〜ん、といふ向きもあらう。
わかつてゐる。
わかつてはゐるが、やつがれ、人並み外れて不器用なんだよね。図画工作とか家庭科とかはいつつも努力点で生き残つてきた、といへばどのていどかわかつてもらへることと思ふ。
長いこと「一度に二段結べるなんて、いいなあ。糸端の処理も一度で済むし」と思つてゐた。思つてゐて、試したことはなかつた。
スプリットリングは好きでたまに作るんだけど、でも今ひとつうまくできない。それであきらめてゐたんだね。
 
しかし。
まあタティングレースで失敗したからつて人が死ぬわけぢやない。
といふわけで、ためしてみた。
 
うーん、やつぱりうまくできないなあ。
うまくはできないけど、でも、糸端の始末をするところがひとつで済むといふのは実にいい。
手間が省けるだけでなくて、仕上がりがなんとなく強いやうな気がする。糸がつながつてゐるのでそんな感じがするのかな。
 
使用した糸はスペイン製らしい。Finca No.16で、一本の糸だけ見るとほとんど白の淡い水色の糸だ。オリムパスの40番より細い。糸の撚りはあまくて、仕上がりはとてもやはらかい。これでショールとか作つたらさぞかしいいだらうと思ふ。手元に二玉に少し欠けるていどの量がある。ショールとは云はないけど、スカーフくらゐのものができたらなあと思つてゐる。