宗旨替へ

 
全然編んでゐない気がしてゐたが、去年は結局こものばかり三十点ちよい編んだらしい。
一昨年よりもくつ下が減つて、首回り系と帽子がとんとんくらゐか。意味もなくメビウスの輪ものも多い。
 
今年の目標はといふと、「手持ちの毛糸を使ふ」、「自分で紡いだ糸で編む」かな。
つてもう二月も半ばを過ぎてゐるんだが。
ま、いつか。
 
毛糸をしまつてゐるたんすの戸を開けて、「圧倒的ぢやないか、我がstashは」と、田中崇(銀河万丈ぢやないよ。別にそれでもいいけど)聲でつぶやくたびに、これはなんとかしなければ、と思ふ。
どうやら、意識しないうちに去年も手持ちの糸を使ふやうになつてゐたらしく、このショールも手持ちの毛糸で編んだ。途中、足りなくなりさうになつて、今はなき恵比寿のローワンでたまたま同じロットの毛糸を見つけて驚喜した話はすでに書いた。
去年の八月に編み始めて、今年最初に仕上がつた。
これだけ時間がかかつたら大抵はほどいてしまひがちなんだけど、めづらしく完成した稀有な例でもある。
 
PI Shawl
 
Elizabeth Zimmermann の _Elizabeth Zimmermann's Knitter's Almanac (asin:0486241785)_ は七月のPI Shawl。
毛糸は Rowan Yorkshire Tweed 4 Ply SH271 を七玉ほど。
針は10号。途中でアメリカサイズの8号(0.1mmちいさい)に持ちかへた。
編み始めたのは2008/8/23。星落秋風五丈原
編み終はつたのは2009/1/19。
 
ずつと編んでゐたわけではない。たまに取り上げては編んでまたしばらく放置し、気づいた時に取り上げて編んで、を繰り返してゐた。
先にも書いたが、かういふ状態になると、ほぼ忘れてしまふ。で、あるとき突然出てきてびつくりするわけだ。
 
ぢやあなぜこれは完成したのか。
それがわかつたらほかの編みかけも全部仕上がるだらう。
残念ながら、わからない。
唯一考へ得る理由は、「メリヤス編みばつかりで、手持ち無沙汰の時に編めるから」、なんだが、これだとあてはまるものとさうでないものがあるしなあ……。
 
さうさう、iPhoneで進捗具合をつけてゐたのもよかつたのかも。どこまで進んでゐたかわかるので、即再開できるからだ。
 
ところで、これまでショールの類ひにはあまり興味がなかつた。
レースの作品なんかは「すてきだなあ」とは思つても、「でも、編んでも使はないだらうしなあ」と思つてゐたからだ。
それが、去年三角形のショールを二点ほど編んでみて、それなりに羽織つてきた。
それでも四角形や円形のショールは編まないだらうな、と、性懲りもなく思つてゐた。
三角形だとだいたい半分で済むものを、倍近く編むのはどうよ、と思つたからだ。
 
PI Shawlを編んで、そこらへんの考へはすべてふつとんだ。
ショール、いいよ。それも円形。
 
まづ、羽織る時は半分に折つて使ふのだが、これがとてもあたたかいのである。
去年、ダイヤドミナで三角形のショールを編んだ。ダイヤドミナは並太、かな。寒い時用に使つてゐるのだが、中細毛糸で編んだPI Shawlは、ダイヤドミナで編んだ三角ショールよりあたたかい。
厚さは、まあ持つた感じだと同じくらゐ、あるいはPI Shawlの方が薄いくらゐだと思ふ。
ダイヤドミナは化繊混紡で、ヨークシャーツイードは羊毛100%とといふちがひもあるかもしれないが、おそらくは、半分に折つたことでできるレイヤがいいのだらう。
 
また、半円は三角形より躯に沿ふ。膝にかけたときも、三角形だと両端が気になるが、半円だとそれほど気にならない。肩にかけた時も同様。
 
さらに、折らずに頭からかぶれば、フード付マントにもなる。
……まあ、かういふ使ひ方はしないだらうけどね。
 
そんなわけで、すつかり「いいぢやん、円形ショール」と思ふやうになつてしまつた。
 
また、PI Shawlがよかつたのかもしれない、とも思ふ。
PI Shawlを編む人は、多分、今回やつがれの編んだやうな「ひたすらメリヤス編み」のショールは編まない。大抵は本の表紙に載つてゐるレース模様のものか、六段に一度かけ目と二目一度を繰り返すものを編んでゐるやうである。
最初は、この「六段に一度かけ目と二目一度を繰り返す」のにしやうと思つてゐたのだが、なんとなくメリヤス編みに挑戦(?)する気になつた。
できあがつてみると、この単調さがいい。
色がねー、まうちつと無難だつたらもつとよかつたと思ふんだが、でもまあ、甘さがなくて、使ひやすい。
 
さうさう、ショールピンを手に入れたので、よけいにショールが便利になつた、といふこともある。
これまでは、結んだり、簪をさしたりしてゐたが、結ぶとのびるし(あるていどは戻るけど)、簪はちよつと長過ぎる上、先が鋭過ぎる感じがする。
 
Shawl Pin
 
Grafton Fibersで購入したこのピンは、向きによつて模様が変はる。ちよつと派手だけど、いろんな色が入つてゐるので、どんな色にも合ふといふ利点もある。
 
そんなわけで、次は六段に一度かけ目と二目一度のPI Shawlを編まうかなあ、なんぞと思つてゐる。
コーン巻の毛糸で編むかなあ、でもできれば、自分で紡いだ糸で編みたいなあ、とか。
 
妄想はひろがるばかりでございます。