Needle Tatting

 
やる気に飢ゑてゐる。
かつて、そんなコマーシャルがあつた。
「ああ、だから成績あがんないんだなー」と思つた、といふのは昔の話。
 
平日は疲れて帰つてきてなにもする気にならない。
週末は寝週末。平日の疲れを癒すといふ名目で、やはりなにもする気にならない。
 
なにもする気にならなくて、収拾のつかないことばかりやつてゐる。
たとへばこれだ。
 
Needle Tatted Objects
 
なんだよ、タティングレースぢやん、といふ向きもあらうが。
右端の作りかけを見てもらへるとわかるかと思ふけれど、ニードルタティングなんである。
 
なんだよ、やつぱりタティングぢやん。
まーさうなんだが。
 
タティングレースをする理由の半分くらゐは、タティングシャトルが好きだから、だ。
以前も書いたがシャトルのあの形状、小ささな、機能性、すべてが好きである。
そんなわけで、ニードルタティングをすることはないだらうと思つてゐた。
 
人間とはわからないものである。
自分のことさへわからないのだから、それもまた当然か。
 
ある日、このヴィデオを見て、考へが変はつた。
ニードルタティング、やつてみたい。
 
といふわけで、針と本とを入手して、実際にやつてみた、といふわけだ。
 
針を使つたときの利点(と、やつがれが思つてゐる点)をまづあげてみやう。

  • 糸をシャトルに巻く必要がない
  • あまつた糸をシャトルから巻き取る必要がない
  • やりなほしが簡単(ただしリングまたはチェインを完成させるまでの間は、といふ限定付)
  • かぎ針に持ちかへる必要がない
  • 結び目を移動させる必要がない

 
ニードルタティングとシャトルタティングのちがひを語る時に意外と無視されがちなのが、この「糸を巻く/巻き取る」ことだ。
「おうちに着くまでが遠足」なら、シャトルに糸を巻くところからあまつた糸を巻き取るまでがタティングレース(シャトルを使つたもの、な)だと思ふ。
ニードルタティングにはそれがない。針の穴に糸をとほせばそれでよし。実際は、糸の長さを計算する必要はあるけれど、それはシャトルを使ふ場合だつて同じ話だ。
 
やりなほしが簡単なのは、リングやチェインを完成させるまでは糸が針に巻付いてゐるだけだからだ。「あ、間違へちやつた」といふ時は、針から糸をはづせばよい。
シャトルを使用する場合は糸と糸とが結ばれた状態なので、これをほどくのはチト手間である。
 
シャトルだつて先にかぎ針がついてゐたりするものもあるが、残寝ながら本邦では稀だ。先端がとがつてゐるものでも、かぎ針でないとうまくピコから糸を引き出せない場合が多い。針の場合はそのまま針の先端でピコから糸を引き出すことができる。かぎ針もあると便利かとは思ふが、まあ絶対必要といふわけではない。
 
そして、やはり、「結び目を移動させる必要がない」といふのは、とても大きな利点だと思ふ。
シャトルタティングをはじめる際に、初心者の一番戸惑ふのがこの「結び目を移動させる」ことだと思はれるからだ。
ニードルタティングの場合は、針に糸を巻き付けてゆけばよい。
おそらく本を見れば習得できる。
ニードルタティングのよさはここにあると思はれる。

あとは、さうだなあ、シャトルタティングではすべりが悪くてどうも使ひづらいといふ糸でも、ニードルタティングだつたら問題ないといふこともある。
 
ぢやあニードルタティングつていいことづくめぢやん、といふことかといふと、まあやはりさうでもない。
物事にはいい面と悪い面がちやんとあるわけで。
 
ニードルタティングの場合、糸の太さによつて針を変へる必要がある。
シャトルタティングの場合は、基本的には同じシャトルで太い糸から細い糸までまかなふことができる。まあもちろんシャトルに巻けないやうな糸は無理だけれども、基本的にタティングレースに使ふやうな糸なら、ひとつのシャトルでなんとかなる。
 
一方ニードルタティングは、といふと、んー、まあ、針の穴に糸がとほればひとつの針でなんとかなるのかもしれないが、これまた基本的には以下のやうになると思ふ。

  • エミーグランデの場合#3の針
  • オリムパス40番の場合#5の針
  • DMC80番の場合#7または#8の針

針は数が大きくなれば細くなる。
ニードルタティングでは針に糸を巻き付けるので、針の太さが作品の大きさを左右する。特殊な効果を求めないのなら、糸にふさはしい針を選ぶ必要があるといふわけ。
 
そして、上記の糸と針のサイズも必ずしも正しいとはいへない。
ほんとうはオリムパスの40番にも#7を使ひたいところなんだが、残念ながら針の穴に糸がとほりづらい。#5だと、なんとなく作品がへなつとする気がするんだよね。
つまり、必ずしも糸とあふ針があるとはかぎらない、といふことだ。
 
これはいい面とも悪い面ともいへない、ニードルタティングの特徴だが、リングとチェインのある作品の場合、リングの中には糸が二本とほつてゐる。したがつて、シャトルタティングと同じものを作ると、若干大きめになる可能性が高い。
 
たとへばこんな感じ
Shuttle tatted motif and Needle tatted one
 
左がシャトル、右が針で作つたもの。
個人差はあると思ふし、針や糸の組み合はせでも変はつてくるかとは思ふが、まあ一例といふことで。
こんな感じなので、ニードルタティングで作つたものの方がやはらかくできる。
逆にいへば、しつかりした仕上がりが好きなら、シャトルタティングの方がいいといふことだ。
 
また、持ち運びの楽さを考へると、針よりシャトルではないかと思ふ。
針はとてもコンパクトにしまへるが、なにを云つても「針」である。しかも長い。とりあつかひにかなり注意が必要だ。
 
あとはまあ、これはシャトルでもさうだつたわけだけれども、ちよつとむづかしい技とかが針だとなかなか使へない。たとえぱシャトルを二個使ふやうな作品の場合、針だと一度針から糸をはづして、なんてなことをしないといけないが、まだそれは試してゐない。
そんなわけだから、「これが作りたいなー」と思つても針だと作れないので、なかなか上達しないといふ話もある。
 
で、まあ、普段はやはりシャトルを使つてゐる。
Once in a while, 針も使ひたくなつて使ふつて感じ。